9−9
2006 / 10 / 13 ( Fri )
「おっ、3つの輪郭があるね。きっとあれだよ。おばあちゃんたちは。」
幸治が言った。
「おばあちゃんたち?」
今日子と凛は顔を見合わせた。ほかに誰がいるの?
「それは会ってからのお楽しみ。」
そうこうしているうちに、輪郭がだんだんはっきりして誰が近づいてくるのかが判った。
「えーと、曾おばあちゃんと。えっ、おじいちゃんとその隣は誰かしら?」
雅がそういっている矢先に凛が駆け出した。それに続き今日子もである。
「お父さんどうしていたのよ。私たちを置き去りにして勝手に死んでしまって。私たちがどんなに寂しい思いをしたか分る。・・・・」
凛は泣きじゃくりながら隆志にしっかりしがみついた。今日子も凛の上から覆いかぶさるように隆志に抱きついた。
「どうして私たちを置いて先に死んでしまったの?それからどんなに苦労したか。本当に大変だったんだから。」
今日子の言葉も涙にあふれ、語尾を聞き取ることが出来なかった。
何も話さず、3人は抱き合ったまま、時間が流れた。
雅は驚いたように3人を見つめていたが、隣にいる幸治が不思議でならなかった。
「幸治おじさん、どうしておじさんだけ3人の輪に入らないの?」
「それはね、僕は何回もおじいちゃんや、曾おじいちゃん、それに曾おばあちゃんに会っているからだよ。」
「え、そうなの。」
雅は目を丸くした。
幸治の話しを聞いて凛がムッとして幸治を睨みつけた。
「あんた、そんなこと一度も私に話したことなかったじゃない。お父さんやおじいさんに会ったなんて話。」
「それなら言うけど、ここに来ていないで僕が話したこと信じた?きっと姉さんのことだから、フンと鼻で笑って取り合わなかったと思うよ。」
凛は幸治の言ったことが的を射ていたので何も言えなかった。凛と今日子は春江に会えたことより、先に自分で命を絶った隆志に会えたことが嬉しくてたまらなかった。
「あなた達、いったい誰に会いに来たの?」
春江は笑みを浮かべて言った。
「おばあさんに会いに来たのよ。でもね、お父さんがいるとなるとちょっとね。・・・」
凛のちゃっかりした物言いに、みんな大笑いした。
雅は春江の隣にいる老人が誰だか分からなかった。
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9−8
2006 / 09 / 27 ( Wed )
幸治に続き、今日子、凛、雅と親子3代が後に続いて2階に上がった。
拓哉は不安そうに見送った。
「じゃあ、仰向けになってゆったりした気持ちになって。僕の言うことを頭で想像しながらやってみて。じゃあいくよ。」
幸治も仰向けになり、自分に言い聞かせるようにひと言一言ゆっくり誘導していき、リラックス状態が極に達したとき、あの世へと誘導するCDをかけた。・・・

「さすが、雅ちゃんは普段から練習しているからちゃんと上がってきたね。」
「よかった。上手く出来て。」
幸治と雅は足元も分からない濃い霧の中で、上手くいってホットした様子で、互いを見合わせた。
「ところで、おばあちゃんとお母さんはどこにいるのかしら。」
5分としないうちに今日子と凛が姿を現した。
「お母さん、遅かったじゃない。失敗したのかと思って心配しちゃったわ。」
心配そうだった雅の顔が凛を見つけたとたんに晴れた。
「ごめん、ごめん。勝手がぜんぜん分からないし、ここに来られたのも奇跡としか思えないわ。ねえ、お母さん。」凛が振り返り今日子に言った。
「私もここにいること自体不思議で仕方ないのよ。本当にここが天国なの?」
今日子が幸治に尋ねた。
「天国かどうかは分からないけれど、あの世であることは確かだよ。ほら」
幸治は遠くを指差した。
小さな光が遠くに見えた。光がだんだん大きくなってきた。何かが近づいているようだった。
「きっと、曾おばあさんたちがこちらに向っているんだ。もうすぐ曾おばあちゃんに会えるんだね。」
雅が嬉しそうに言った。今日子も凛も期待に胸膨らませていた。凛は少し心配だった。いくつかの光が重なっているかのように見えてきた。
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