9−8
2006 / 09 / 27 ( Wed )
幸治に続き、今日子、凛、雅と親子3代が後に続いて2階に上がった。
拓哉は不安そうに見送った。
「じゃあ、仰向けになってゆったりした気持ちになって。僕の言うことを頭で想像しながらやってみて。じゃあいくよ。」
幸治も仰向けになり、自分に言い聞かせるようにひと言一言ゆっくり誘導していき、リラックス状態が極に達したとき、あの世へと誘導するCDをかけた。・・・

「さすが、雅ちゃんは普段から練習しているからちゃんと上がってきたね。」
「よかった。上手く出来て。」
幸治と雅は足元も分からない濃い霧の中で、上手くいってホットした様子で、互いを見合わせた。
「ところで、おばあちゃんとお母さんはどこにいるのかしら。」
5分としないうちに今日子と凛が姿を現した。
「お母さん、遅かったじゃない。失敗したのかと思って心配しちゃったわ。」
心配そうだった雅の顔が凛を見つけたとたんに晴れた。
「ごめん、ごめん。勝手がぜんぜん分からないし、ここに来られたのも奇跡としか思えないわ。ねえ、お母さん。」凛が振り返り今日子に言った。
「私もここにいること自体不思議で仕方ないのよ。本当にここが天国なの?」
今日子が幸治に尋ねた。
「天国かどうかは分からないけれど、あの世であることは確かだよ。ほら」
幸治は遠くを指差した。
小さな光が遠くに見えた。光がだんだん大きくなってきた。何かが近づいているようだった。
「きっと、曾おばあさんたちがこちらに向っているんだ。もうすぐ曾おばあちゃんに会えるんだね。」
雅が嬉しそうに言った。今日子も凛も期待に胸膨らませていた。凛は少し心配だった。いくつかの光が重なっているかのように見えてきた。
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9−7
2006 / 09 / 21 ( Thu )
「そういえば、そうかな。特殊な音楽みたいなものが流れる前に、先生のアナウンスで呼吸を整えていくから。」
「そうなの。」
「ええ。」
「雅ちゃん、曾ばあさんに会ってみたくない?」
幸治が不意に雅に尋ねた。
「あんた、何言ってんの?おばあちゃんはもう亡くなってしまったのよ。大丈夫?」
凛は、もうすでに亡くなってしまった春江に会おうなんて、なんて馬鹿な話をするのだろうと呆れ返った。
「いやになっちゃうな、今まで、あの世を体験できる話をしていたじゃないか。その方法を使用してだよ。ばあさんはまだこの近くにいるから、会い易いといえば、会い易いんだ。」
「じゃあ、私も会いたいんだけれど。何とかなるかね?」
「え、母さんが?」
「そうだよ。お祖母さんには別れの挨拶もしていなかったし、これが最期となれば聞きたいことも色々あってね。」
「ちょっと無理だと思うな。練習が必要だから、すぐにさっとあの世に行けるかどうか。でも是非にと言うんだったら、試してみたら。」
「え、母さんがやると言うんだったら、私もやりたいな。」
「姉さんも?」
「ええ、私もおばあちゃんに最期の挨拶したいから。」
「あなた、どうする?」
凛はさっきから何も言わず、黙って会話を聞いていた拓哉に尋ねた。
「わ、私は遠慮しておくよ。みんな帰れなくなったら困るだろ。」
「何言ってんのよ。変なこと言わないでよ。幸治、そんなことってあるの、あの世へ行って帰れなくなるってこと?」
「まあ、今回はないと思うよ。それほど上に上がらなくても、ばあさんが近くにいるから。」
「よかった。帰れなくなるんじゃ困るものね。そうよね、お母さん。」
「そうだね。」
「じゃあ、2階へ上がって。僕の指示通りにやるんだよ。ポイントは無になれるかどうか。意識がはっきりしていると、意識が飛ばないから、リラックスして無の状態になれれば、大丈夫。
じゃあ、やってみようか。」
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